用語集
ランニング科学とRouteRunアプリの専門用語を解説
目次 (20語)
ACWR (急性慢性負荷比)
一言で言うと: 直近7日間の走行量を、過去28日間の平均で割った比率。怪我リスクの指標として使われます。
ランナーの怪我の多くは「やりすぎ」が原因とされます。先週まで週30kmしか走っていなかった人が、今週急に60km走ると、急性負荷 (Acute) が慢性負荷 (Chronic) を大きく上回り、ACWRが2.0になります。
Gabbett (2016) の研究では、ACWRが1.5を超えると怪我リスクが急激に上昇することが示されました。
RouteRunでの使い方
あゆむがあなたの走行履歴からACWRを自動計算します。1.5を超えると、コーチングの方針を切り替え、強度を上げる提案を止めて休養を勧めます。
Gabbett, T. J. (2016). The training—injury prevention paradox. Br J Sports Med, 50(5), 273-280. DOI: 10.1136/bjsports-2015-095788
急性負荷 (Acute Workload)
一言で言うと: 直近7日間に蓄積したトレーニング負荷。「最近どのくらい走ったか」の指標。
距離だけでなく強度も加味されます。心拍数や主観的運動強度 (RPE) を使って、走った時間と強度を掛け合わせて算出します。
ACWR (急性慢性負荷比) の分子になる値で、これだけが高くても怪我とは結びつきません。重要なのは、慢性負荷との比 (ACWR) です。
慢性負荷 (Chronic Workload)
一言で言うと: 過去28日間の平均的なトレーニング負荷。「いつもどのくらい走っているか」のベースライン。
慢性負荷が高いランナーは、急性負荷の変動に対して耐性が高いことが知られています。つまり、普段からたくさん走っている人は、たまに多く走っても怪我しにくい、ということです (Gabbett, 2016)。
VO2max
一言で言うと: 体が1分間に取り込める酸素の最大量。有酸素能力の代表的な指標。
単位はmL/kg/min。一般成人男性で40前後、市民ランナーで45-55、エリートマラソンランナーで70-85程度。値が高いほど長く速く走れる傾向があります。
正確な測定にはトレッドミルでの最大努力テストが必要ですが、走行データから推定する方法も確立されています (代表的なのが VDOT)。
RouteRunでの使い方
1.6km以上のランの心拍とペースから、Daniels VDOT方式で推定します。短距離 (1.6km未満) では推定誤差が大きすぎるため、計算しません。
Daniels VDOT
一言で言うと: Jack Daniels博士が提唱した、レースタイムから推定するVO2maxの代替指標。
実験室での測定なしに、レースタイムだけからVO2maxに相当する値を計算できる仕組み。市民ランナーにとって最も実用的な「強さ」の指標として広く使われています。
VDOTから逆算して、「ベース走はこのペース」「インターバル走はこのペース」と訓練ペースが導けるのが大きな利点です。
RouteRunでの使い方
あゆむは、あなたの直近のレース結果やワークアウトからVDOTを計算し、適切な訓練ペースを提案します。
Daniels, J. (2013). Daniels' Running Formula (3rd ed.). Human Kinetics.
心拍ドリフト
一言で言うと: 一定のペースで走り続けると、時間の経過と共に心拍数だけが徐々に上昇する現象。
主な原因は脱水と体温上昇。長時間ランや暑い日のランで特に顕著になります。Coyle & González-Alonso (1998) の研究で詳しく解析されています。
心拍ドリフトが大きいほど、補給戦略 (水分・電解質) の見直しや、ペース調整が必要なサインです。
RouteRunでの使い方
あゆむが走行後にペースと心拍の推移を解析し、ドリフトが大きい場合は次回の補給・ペース戦略を提案します。
Coyle, E. F. & González-Alonso, J. (1998). Cardiovascular drift during prolonged exercise. Med Sci Sports Exerc. PMID: 9744726
ランニングエコノミー
一言で言うと: 同じペースで走るのに、どれだけ少ない酸素で済むか。「燃費」のような指標。
VO2maxが「エンジンの最大出力」だとしたら、ランニングエコノミーは「燃費」。同じVO2maxでも、エコノミーが良い人は速く走れます。
フォーム、筋力、神経系の最適化、心理的リラックスなど多くの要因で改善します。
慣らし走 (Easy Run)
一言で言うと: 会話できる程度の低強度で走る、ベース構築のためのラン。
マラソントレーニングの基礎を作る最重要メニュー。心拍数は最大心拍の65-75%、RPE 3-5/10 程度。
初心者は「物足りない」と感じやすいですが、エリートランナーでも週間走行距離の70-80%は慣らし走です。
テンポ走
一言で言うと: 「快適にきつい」ペースで20-40分走るトレーニング。
乳酸閾値 (LT) 付近のペースで走ることで、より長く速いペースを維持できる体を作ります。ハーフマラソンよりやや速いペースが目安。
インターバル走
一言で言うと: 高強度の疾走とジョグ (またはレスト) を繰り返すトレーニング。
代表例: 400m × 6本、レスト90秒。VO2max向上に最も効果的な方法とされています。
強度が高いため、週1-2回まで。ACWRを超えないよう、慎重に取り入れる必要があります。
周期化トレーニング
一言で言うと: トレーニングを期間ごとに目的を変えて構築する手法。
典型例: ベース期 (1-2ヶ月) → ビルド期 (1-2ヶ月) → ピーク期 (3-4週) → テーパリング (2-3週) → レース。
各期間で重点が変わるため、同じ走行量でも体への適応が深まります。
テーパリング
一言で言うと: レース2-3週間前から走行量を意図的に減らし、疲労を抜く期間。
強度は維持しつつ、量を40-60%に減らすのが定石。やりすぎ (止めすぎ) も逆効果で、適切な減量曲線が重要です。
自己決定理論 (SDT)
一言で言うと: 人のモチベーションを「自律性」「有能感」「関係性」の3つの基本欲求から説明する心理学理論。
Deci & Ryan (2000) が提唱。スポーツや教育の領域で広く応用されています。
「もっと頑張れ」「お前は遅い」のような外部からの押し付け (controlling motivation) は、長期的に行動を阻害します。逆に「あなたのペースで」「自分で選んで」というメッセージ (autonomy-supportive) は、長く続ける動機を強化します。
RouteRunでの使い方
あゆむのコーチングはすべてSDTに準拠して設計されています。「遅い」「もっと速く」のような押し付け表現は絶対に使わず、あなたのペースを肯定する言葉を選びます。
Deci, E. L. & Ryan, R. M. (2000). The "what" and "why" of goal pursuits. Psychological Inquiry, 11(4), 227-268.
RPE (主観的運動強度)
一言で言うと: 「いまどのくらいきついか」を自分の感覚で1-10の数字で表したもの。
1: ほぼ動かない / 3-4: 楽 / 5-6: ちょっときつい / 7-8: かなりきつい / 9-10: 限界。
心拍やパワーメーターがなくても、自分の身体感覚だけで負荷を把握できる優れた指標です。
HealthKit
一言で言うと: iPhoneとApple Watchで集めた健康・運動データを一元管理するApple純正の仕組み。
RouteRunはHealthKitから走行履歴・心拍・睡眠などのデータを読み取り、コーチングの基礎にしています。データはお使いのデバイス内で管理され、あなたの許可なくRouteRunが外部に送信することはありません。
Live Activity
一言で言うと: ロック画面やDynamic Islandにリアルタイム情報を表示する仕組み。
RouteRunでは、走行中の距離・ペース・心拍数をロック画面に表示します。iPhoneを開かずに今の状態を確認できます。
Apple Foundation Models
一言で言うと: デバイス内で動くApple純正の生成AIモデル。クラウド送信不要でAIが使えます。
RouteRunのプロアクティブインサイト (走る前の気づき・体調チェック) はFoundation Modelsで処理されるため、データがクラウドに送られません。プライバシーと低遅延の両立が可能です。
あゆむ (Ayumu)
一言で言うと: RouteRunのAIランニングコーチ。あなたの走行データを基にアドバイスを届けます。
名前の由来は「歩む」。短期的な速さより、長く健康に走り続けることを大切にする伴走者として設計されています。
3層構造 (Apple Foundation Models / Gemini 2.5 Flash / ルールベース) で、状況に応じて最適な処理を行います。
Deep Think
一言で言うと: あゆむが時間をかけて深く考えてから答えるモード。
「サブ4を目指すのに足りないものは?」のような複雑な質問では、即答ではなく、走行履歴を細かく分析してから回答します。Proプランで利用可能です。
バーチャルコース体験
一言で言うと: 実際のマラソン大会のコースデータを使い、あなたの現在地周辺に同じ距離・高低差のルートを生成する機能。
東京マラソン、ボストン、ロンドン、ベルリンなど100以上の大会に対応。本番と同じプロフィールを地元で予習できます。
この用語集は教育目的です。医学的助言を構成するものではありません。怪我や体調不良の際は医療専門家にご相談ください。